※ネタバレ含む内容にとなっていますのでネタバレを気にするかたはご注意ください。
あらすじ
過去に度々事業に失敗、計画性も仕事もないが楽天的な父キム・ギテク。そんな甲斐性なしの夫に強くあたる母チュンスク。大学受験に落ち続け、若さも能力も持て余している息子ギウ。美大を目指すが上手くいかず、予備校に通うお金もない娘ギジョン… しがない内職で日々を繋ぐ彼らは、“ 半地下住宅”で 暮らす貧しい4人家族だ。
“半地下”の家は、暮らしにくい。窓を開ければ、路上で散布される消毒剤が入ってくる。電波が悪い。Wi-Fiも弱い。水圧が低いからトイレが家の一番高い位置に鎮座している。家族全員、ただただ“普通の暮らし”がしたい。
「僕の代わりに家庭教師をしないか?」受験経験は豊富だが学歴のないギウは、ある時、エリート大学生の友人から留学中の代打を頼まれる。“受験のプロ”のギウが向かった先は、IT企業の社長パク・ドンイク一家が暮らす高台の大豪邸だった——。
パク一家の心を掴んだギウは、続いて妹のギジョンを家庭教師として紹介する。更に、妹のギジョンはある仕掛けをしていき…“半地下住宅”で暮らすキム一家と、“ 高台の豪邸”で暮らすパク一家。この相反する2つの家族が交差した先に、想像を遥かに超える衝撃の光景が広がっていく——。(公式サイトより引用)
パラサイト 半地下の家族とは
2019年 第72回カンヌ国際映画祭で韓国映画初となるパルムドールを受賞した作品で監督はポン・ジュノ、主演はソン・ガンホ。
パルムドールといえば最近では日本で2018年に是枝監督の「万引き家族」が受賞したことで話題になったのが記憶に新しい。
これまで韓国映画がここまで話題になったというイメージはなかったし、評判がとても良かったこともあり、前から気になっていた映画だったので見てきました。
実際に鑑賞して
まず、あまり馴染みのない韓国カルチャーに対してとても新鮮に感じた。
韓流ドラマをみていた人ならそんなことはないと思いますが、韓国の映像作品を初めて見る者からしたらセリフの言い回しだったり、韓国人の家族や身の回りの人に対する接し方などとても面白かった。
あと受験大国故の家庭教師に対する要求の高さや、北朝鮮に対する韓国国民の意識など随所に日本映画でもなくハリウッド映画でもない韓国特有の文化があり、それの断片を知ることでちょっとした海外旅行気分(おおげさ?)を感じることができた。
家庭教師ギウ
4回も受験に失敗しているのにその受験経験の高さを買われ、親友ソジュンから家庭教師の代打を頼まれるギウ。
ソジュンは家庭教師をしているIT企業の社長の娘ダヘに恋心を抱いており、他の男に取られるのが心配で人畜無害であるギウに依頼した。
ソジュンはエリートなのに半地下で生活している無職のキム一家に対してもとてもフレンドリーに接したり、立ちションをしている酔っ払いにも恐れず注意したりと性格もめちゃくちゃ良く完璧人間だった。
そんなソジュンから「お前なら任せられる」と依頼をされたギウってめっちゃいい奴なんだろうと思った。
しかしギウは親友が好きだと言っていたダヘに対して1mmも葛藤することなくダヘといい感じになり、結構簡単に恋人関係になってしまう。
恋人は奪うは、最終的にパク一家をめちゃくちゃにするはで親友ソジュンが全くうかばれないし、そもそもなんでソジュンの親友なのかも疑問が残った。
格差家族の唯一の希望ソダム
半地下で様々なバイトを経験したためか、あらゆる面でスキルが高いソダム。
家庭教師と派遣会社受付の二役を演技したり、ギウが家庭教師の面接に持っていく偽装資料を作ったりと大抵のことはそつなくこなした。
偽装資料を漫画喫茶(?)的なところで作っているときも禁煙なのにタバコを吸っており、店員から注意されても動じないところから強きな性格であることも伺える。
おそらく家族の中で一番というか唯一自立できる力を持っていたと思う。それはパク一家に潜り込むときも、唯一ソダムだけが元々いた人間の代わりではなくオリジナルの仕事として就職していたことからも、今回の話の中で特別な存在であった。
そんなソダムだかキム一家の中でただ一人の死亡者となってしまう。唯一自立の可能性もあったソダムが死んだ訳はなんだったのか?格差社会にある理不尽な壁を表現したかったのか?と色々考えてしまう。
酒とタバコが好きで自宅のトイレの天井の上にタバコをしまっていたソダム。
洪水して自宅が浸水したとき、逆流して溢れ出す便器の蓋に腰をおろしタバコを吸う姿がこの映画で一番生命力を感じるシーンだった。
まとめ
自分としてはとにかくこの二人の兄妹が魅力的な映画だった。
ブラックコメディーと称したサイトもあり、ストーリーも粗いところがいくつかあるが、それも気にならないくらい所謂ジェットコースター的な展開で、落ち出したら止まらなくなる後半は息つく暇もなかった。
サブタイトル「半地下の家族」のとおり韓国の格差社会を地上・半地下・地下の標高差で表現し、土砂降りのなか地上から半地下へ戻る家族の姿には切なさしかなかった。
転換やスロー描写などいちいちオシャレな編集で見ていて飽きなかった。エンドロールで流れるバンドのボーカルの声は絶妙に擦れて一瞬ボブディランみたいだと思ったけど、全くそうでもなかった。スタッフロールが短いのは見ていて楽だった。
そんなパラサイトですが個人的評価としてはとても楽しめたので★★★★☆です。